様式は自由。でも「様式15号に則る」必要がある
古物商の許可を取ると、必ずついてくるのが「古物台帳(帳簿)」です。ここで多くの人がつまずくのが、「決められた様式でないとダメなのか?」という点ではないでしょうか。
結論から言うと、様式そのものは自由です。エクセルでも、手書きのノートでも、クラウドサービスでも構いません。ただし——書くべき項目(記載事項)は法律で決まっていて、1つでも欠けると帳簿として不十分です。
古物台帳の様式は、古物営業法施行規則の別記様式第15号に定められています。各都道府県警察のサイトでは、おおむね次のように案内されています。
帳簿は、この様式に則っていればどのようなものを利用しても構いません。エクセルなどで自作したものでも、ノートに手書きで作成したものでも構いません。
つまり「様式15号を印刷して使え」ではなく、「様式15号が求めている項目を満たせ」ということです。この自由度があるからこそ、項目を満たしているかを自分で確認する責任が生まれます。
法定の記載事項(ここが本体)
古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき・引き渡したときに、その都度次の事項を記録するよう定めています。
| 記載事項 | 補足 |
|---|---|
| 取引の年月日 | |
| 区別 | 受入れ/払出しで書く語が違う(後述) |
| 古物の品目及び数量 | |
| 古物の特徴 | 型番・シリアル・状態など |
| 相手方の住所、氏名、職業及び年齢 | 4点セット。職業・年齢の抜けが多い |
| 相手方の確認のためにとった措置の区分 | いわゆる「確認方法」 |
このほか、代価(金額)も様式15号の欄にあります。
見落とされやすいのは「確認方法」
条文では「前条第一項の規定によりとつた措置の区分」と書かれているため、ピンとこない人が多い項目です。要するに、相手方が本人かどうかをどうやって確かめたか(運転免許証の提示を受けた、非対面の法定の方法で確認した、など)を記録しておく、ということです。
実際にいくつかのクラウド型・アプリ型の台帳サービスの出力を確認してみたところ、この「確認方法」の欄が用意されていないものがありました。住所・氏名・職業・年齢は入力できるのに、確認方法だけがない。これでは法定の記載事項を満たせません。
お使いのツールがあるなら、まず「確認方法」の欄があるかを見てください。ここが一番の落とし穴です。
「区別」は受入れと払出しで書く言葉が違う
様式15号の備考1に、こう書かれています。
「受入れ」の「区別」欄には買受け又は委託の別を記載し、「払出し」の「区別」欄には売却、委託に基づく引渡し又は返還の別を記載すること。
整理すると次のようになります。
| 書くべき区別 | |
|---|---|
| 受入れ(仕入れたとき) | 買受け/委託 |
| 払出し(引き渡したとき) | 売却/委託に基づく引渡し/返還 |
ポイントは、受入れ側に「交換」や「返品」という選択肢は無いということ。委託で預かった品物を売ったときの払出しは「売却」ではなく「委託に基づく引渡し」ですし、売れずに持ち主へ返したときは「返還」です。
自作エクセルを使っている方は、この区別の選択肢が備考1どおりになっているか確認してみてください。
1万円未満は免除。ただし「例外品目」に注意
取引額が1万円未満の場合、確認・記帳の義務は原則として免除されます。副業で少額の仕入れをしている方には効いてくるルールです。
ただし——金額に関係なく記帳が必要な「例外品目」があります。ここが重要です。
従来からの例外品目(古物営業法施行規則 第16条第2項)
- 自動二輪車・原動機付自転車(これらの部分品を含む。ねじ、ボルト、ナット、コード等の汎用性の部分品は除く)
- ゲームソフト(専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物)
- CD・DVD・ブルーレイ等(光学的方法により音又は影像を記録した物)
- 書籍
なお、自動車(四輪)はこの例外品目のリストには含まれていません。「バイクは対象だが車は対象外」という点は間違えやすいので注意してください。
2025年10月に追加された4品目
金属盗の増加を受けた改正により、2025年10月1日から次の4品目が追加されました。
- エアコンディショナーの室外ユニット(いわゆる室外機)
- 電気温水機器のヒートポンプ
- 電線
- グレーチング(金属製のものに限る)
電線については家庭用の延長コード・充電ケーブル・LANケーブル等は対象外、グレーチングはコンクリート製・FRP製は対象外とされています。
せどり・転売をしている方にとっては、ゲームソフト・CD/DVD・書籍が例外品目に入っている点が実務上いちばん効きます。「500円の中古本だから記帳不要」は誤りです。
クラウド・アプリで管理するなら「直ちに書面に表示」できるか
紙ではなく電磁的記録(データ)で保存する場合、必要に応じて営業所において直ちに書面に表示できることが求められます。
これは警察の立入り時を想定した要件です。つまり、
- 帳簿データがすぐ印刷できる形になること
- その場で待たされずに表示できること
がポイントになります。
ここも実際に検証してみて気づいた点があります。台帳サービスの中には、出力(PDF/CSV)がメール送信でしか行えないものがありました。期間を指定して送信し、メールを受信して添付ファイルを開く——という流れです。日常業務では問題なくても、「直ちに表示」という要件に照らすと不安が残ります。
ツールを選ぶときは、その場でワンクリックで帳簿を表示・印刷できるかを確認しておくと安心です。
保存期間は3年
帳簿は、最終の記載をした日から3年間、営業所に備え付けておく必要があります。データで持つ場合も同じです。
うっかり消してしまわないよう、削除ではなく非表示(論理削除)で残す運用にしておくと安全です。
セルフチェックリスト
いま使っている台帳(エクセル・ノート・サービス)を、この7点で点検してみてください。
- 取引年月日がある
- 区別があり、受入れ=買受け/委託、払出し=売却/委託に基づく引渡し/返還 になっている
- 品目・数量がある
- 特徴(型番・シリアル・状態)が書ける
- 相手方の住所・氏名・職業・年齢が4つとも揃う
- 確認方法の欄がある ← 最頻出の抜け
- データ管理なら、その場で印刷できる/3年間残る
1つでも欠けていたら、運用を見直すサインです。
ちなみに、私が作っているコブチョウは、このチェックリストを満たすことを出発点にしたクラウド台帳です。仕入と売却を記録すると様式15号のPDFがそのまま出力でき、確認方法の欄も備えています。
おわりに
古物台帳は「様式15号の紙を使うかどうか」ではなく、「法定の記載事項を満たしているか」で判断されます。様式が自由なぶん、確認の責任は自分にあります。
私自身、古物商としての開業準備を進めながら、実際に手を動かして確かめた内容をこのブログに残していきます。この記事で少し触れた「1万円未満の免除」については、その続きとして1万円未満でも記帳が要る古物、1万円以上でも要らない古物で、金額の数え方や例外品目の使い方を実務に即して整理しました。
なお、いま使っている台帳がこの7点を満たしていなかった方は、コブチョウを一度試してみてください。仕入と売却を記録していくだけで、様式15号のPDFがその場で開きます。
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※この記事について
法令の解釈・運用は所轄の警察署によって細部が異なる場合があります。最終的な判断は必ず管轄の警察署(生活安全課)にご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。
参考(一次情報)
