1万円未満でも記帳が要る古物、1万円以上でも要らない古物

「1万円未満は免除」は正しい。ただし判定の軸が3つあります

前回の記事で、古物台帳の様式そのものは自由でも記載事項は省略できない、という話を書きました。そのなかで「1万円未満の取引は原則として免除される」と一行だけ触れたのですが、この一行は、いざ自分の取引に当てはめようとした途端に足りなくなります。

副業で古物商を始める準備をしている個人開発者として、自分が使うための台帳を作りながら条文と通達を読み込んでいるのですが、この「1万円未満」というルールは、金額を見るだけでは判定できない仕組みになっていました。

結論から書くと、免除されるかどうかは、次の3つを順番に確認することで決まります。

  • いくらの取引か(1点ごとではなく取引の合計で見る。しかも税抜)
  • 何を扱ったか(1万円未満でも義務が残る「例外品目」に当たるか)
  • 受入れか、払出しか(仕入れたときと売ったときとで、義務の範囲そのものが違う)

特に3番目は、知っているかどうかで台帳の作り方が変わってくるほど大きな話であるにもかかわらず、あまり語られていません。順に見ていきます。

先に、全体像を置いておきます

警察庁が各都道府県警察に示している「古物営業法等の解釈運用基準」という通達には、義務の範囲をまとめた別表が付いています。それを、2025年10月の改正内容を反映するかたちで整理し直したものが次の表です。

古物の種類 取引額(税抜) 買取り時の
相手方の確認
記帳
(受入れ)
記帳
(払出し)
美術品類/時計・宝飾品類 1万円以上
美術品類/時計・宝飾品類 1万円未満 × × ×
自動車(四輪。部分品を含む) 1万円以上 ○ ※
自動車(四輪。部分品を含む) 1万円未満 × × ×
自動二輪車・原動機付自転車(本体) 金額を問わず
同・部分品(ねじ、ボルト等の汎用品を除く) 1万円以上
同・部分品(同上) 1万円未満 ×
ゲームソフト/CD・DVD等/書籍 金額を問わず ×
室外機・ヒートポンプ/電線/グレーチング(金属製) 金額を問わず ×
上記以外のすべての古物 1万円以上 ×
上記以外のすべての古物 1万円未満 × × ×

※ 自動車を引き渡した場合、その相手方の住所・氏名・職業・年齢の記載は不要とされています(施行規則第18条第2項)。

この表でいちばん目を引くのは、いちばん右の列がほとんど「×」で埋まっていることではないでしょうか。これが3番目の軸の話で、後半で詳しく書きます。

免除は「二階建て」で決まっています

そもそも古物商に課されている義務は、相手方の確認(古物営業法第15条)と帳簿への記載(同第16条)の2つに分かれていて、免除の仕組みもこの2つに対応するかたちで組み立てられています。

まず確認義務のほうは、第15条第2項で次の2つの場合に免除されます。

一 対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引をする場合(特に前項に規定する措置をとる必要があるものとして国家公安委員会規則で定める古物に係る取引をする場合を除く。)
二 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受ける場合

この「国家公安委員会規則で定める金額」が1万円(施行規則第16条第1項)、括弧書きの「国家公安委員会規則で定める古物」が、いわゆる例外品目(同第16条第2項)です。

次に帳簿のほうですが、第16条のただし書がこうなっています。

ただし、前条第二項各号に掲げる場合及び当該記載又は記録の必要のないものとして国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した場合は、この限りでない。

ここが重要で、記帳が免除される場面は2系統あるということです。前半の「前条第二項各号に掲げる場合」は、確認義務の免除がそのまま記帳の免除にもなるという意味で、1万円未満の取引と買い戻しがこれに当たります。そして後半、「〜古物を引き渡した場合」だけを対象にした、まったく別の免除がもう一つある。この後半が、先ほどの表のいちばん右の列を「×」だらけにしている正体です。

落とし穴1:「1万円」の数え方

1点ごとではなく、その取引の合計で見ます

条文が「対価の総額」と書いているとおり、判定するのは1点ごとの単価ではありません。警察庁の解釈運用基準には、次のように明記されています。

「対価の総額」とは、一度に持ち込まれた物品の対価を全て足し合わせた額を基準とし、個々の物品単価を基準としないという意味である。

つまり、1点500円の品物を24点まとめて12,000円で買い取ったなら、それは「1万円以上の取引」です。単価が安いから免除、という理解は成り立ちません。

しかも、税抜で判定します

これは条文にも様式にも書かれていないのですが、同じ通達に次の一文があります。

なお、「対価の総額」が1万円未満である場合は、相手方の確認義務等が免除されるが、この1万円には、消費税を含まないと解される。そのため、消費税を除いた額が1万円以上の場合に相手方の確認義務等がある。

税込10,890円で買い取った場合、税抜では9,900円ですから免除される、という判定になります。逆に言えば、税込1万円ちょうどのあたりの取引は、税抜に直してから判定しなければ間違えるということです。境界付近の取引がある方は、ここを押さえておく価値があります。

数回に分けて持ち込まれた場合は各回で判定します。ただし——

同じ相手方が同じ品物を数回に分けて持ち込んだ場合、通達は「各回の対価の総額が1万円に満たないような場合は、相手方の確認義務及び帳簿等への記載義務は免除されることになる」としています。形式的には、分割すれば免除の側に落ちるわけです。

ところが通達は、そのすぐ後にこう続けます。

ただし、正当な理由なく数回に分けて古物を売却することを希望する相手方については、その者が持ち込んだ物品について、古物商から警察官に対する申告義務が生じる場合がある。

これは古物営業法第15条第3項の、不正品の疑いがあるときは直ちに警察官に申告しなければならない、という義務のことです。免除を狙って分割を持ちかけてくる相手方は、そもそも不正品の疑いという別の入口に立っていると読めます。「分ければ書かなくて済む」という発想が、なぜ実務で通用しないのか。理由はここにあります。

落とし穴2:例外品目は7つ。境界が意外と細かい

金額に関係なく確認と記帳が必要になる例外品目は、施行規則第16条第2項に7号にわたって列挙されています。

  • 自動二輪車及び原動機付自転車(部分品を含む)
  • エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ
  • 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
  • 光学的方法により音又は影像を記録した物
  • 電線
  • グレーチング(金属製のものに限る)
  • 書籍

問題は、この条文の言葉が日常語とずれていることです。何がこれに当たるのかは、通達を読むと具体的に書かれています。

条文の言葉 含まれるもの 含まれないもの
コンピュータゲームのソフト 家庭用ゲーム機のソフトに加え、パソコン用のゲームソフトも対象。CD・カセット等の形態は問わない
光学的方法により音又は影像を記録した物 CD・LD・DVD・ブルーレイディスク カセットテープ・ビデオテープ・MD・FD・フラッシュメモリ
電線 送電を主目的とするもの。銅線・アルミ線など素材は問わない LANケーブル、テレビ接続ケーブル、家庭用の延長コード・充電ケーブル
グレーチング 側溝等の蓋に用いる格子状のもので、金属製のもの コンクリート製・FRP(繊維強化プラスチック)製
室外ユニット いわゆる室外機。室内機の有無にかかわらず対象
自動二輪車・原付の部分品 汎用品以外の部分品 ねじ、ボルト、ナット、コード等の汎用性の部分品

「光学的方法」という限定が効いてくるのが面白いところで、音楽を記録した物であっても、レーザー光線で信号を読み出す方式でないもの——カセットテープやMDのようなものは、条文上この例外品目に当たらない、というのが通達の整理です。中古のCDを100円で買えば記帳が要り、同じ内容のカセットテープを100円で買えば要らない。理屈は分かるのですが、現場の感覚とはずいぶん違います。

そして副業でせどりをしている方にとって実質的に効いてくるのは、この7つのうちゲームソフト・CD/DVD等・書籍の3つに尽きます。ここが1万円未満でも義務の対象である以上、「安い中古本だから記録は要らない」は成り立ちません。

落とし穴3:売ったときの記帳義務は、4区分にしかありません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

先ほどの第16条ただし書の後半、「〜古物を引き渡した場合は、この限りでない」を受けているのが施行規則第18条第1項で、その書きぶりがかなり独特です。

法第十六条ただし書の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物以外の古物とする。
一 美術品類 二 時計・宝飾品類 三 自動車(その部分品を含む。) 四 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(対価の総額が第十六条第一項で定める金額未満で取引されるものを除く。)を含む。)

「次の各号に該当する古物以外の古物」が、記載しなくてよい古物である。裏返せば、引き渡したときに記帳義務があるのは、美術品類・時計宝飾品類・自動車・自動二輪車およびその部分品という4区分だけということになります。

これが意味するところは、なかなかのものです。中古の書籍も、ゲームソフトも、CDも、衣類も、家電も、この4区分のどれにも当たりません。したがって、それらを売ったときの払出しの記帳は、たとえ取引額が1万円を超えていても、法律上は義務ではないということになります。買い取ったときは1万円未満でも書かなければならない書籍が、売ったときは金額を問わず書かなくてよい。この非対称は、法律の目的が「盗品の流通防止」であることを考えれば筋が通っています。盗品を発見するために本当に要るのは誰から入ってきたかの記録であって、誰に出ていったかの記録が重視されるのは、被害品の回復を確実に行う必要がある高額品や車両に限られる、ということです。

それでも、私は全部書くつもりでいます

ここまで読むと、免除される範囲がずいぶん広いことに気づかれたと思います。ではその範囲を目一杯使って、書かなくていいものは書かない運用にするのが賢いのかというと、私はそうは考えていません。理由は3つあります。

1つ目は、判定そのものにコストがかかるからです。ここまで見てきたとおり、免除されるかどうかを決めるには「税抜でいくらか」「例外7品目のどれかに当たらないか」「いま書こうとしているのは受入れか払出しか」を毎回たどる必要があります。普段からシステムを作っている立場で言えば、条件分岐の多い運用は、いずれ必ず破綻します。なぜなら、分岐の数だけ判断が発生し、判断が発生する場所には必ず「面倒だから後で」が入り込むからです。全部書いてしまえば分岐はゼロになり、そのほうが結果的に速い、というのが率直な見立てです。

2つ目は、免除は「書いてはいけない」ではないということです。法定の記載事項を満たしたうえで、義務のない取引まで記録しておくことに、法律上の不利益は何もありません。むしろ、後から「あの取引は税抜で1万円を超えていた」と気づいたときに、記録がなければもう遡れません。

3つ目が実は一番大きいのですが、払出しの記録は、税務のほうで結局必要になるからです。古物の仕入れは、仕入れた時点ではまだ経費になりません。売れて初めて売上原価になり、売れ残った分は棚卸資産として翌年に持ち越されます。つまり「いつ・いくらで売れたか」が分からなければ、そもそも所得を計算できないのです。古物営業法が払出しの記帳を免除してくれていても、確定申告のためには自分で売却の記録を持つことになります。それならば、台帳と売上管理を別々に持つ理由はどこにもありません。同じ1回の記録で両方を済ませてしまうほうが合理的です。

私が作っているコブチョウを、仕入と売却を1回ずつ記録するだけで様式15号の台帳と損益の両方ができあがる設計にしたのは、まさにこの理由からです。義務のために書く記録と、自分の商売のために書く記録を、二重に持たなくて済むようにしたかったからです。

なお、「全部書く」といっても、通達が明示的に手を抜くことを認めている箇所もあります。書籍については、同一人から同時に受け取ったものをまとめて記載してよいとされていて、「『書名』外○冊」や「コミック○冊、文庫○冊」といった書き方が具体例として挙げられています。1冊あたりが安価で大量に持ち込まれる実態を踏まえた扱いです。ただしCD・DVD等は書籍より高額で1回あたりの品数も少ないことから、原則どおり1品ごとに記載するとされている点は注意してください。ついでに言えば、相手方の年齢は生年月日を記載することで代えられるともされています。年齢を計算し直す必要はありません。

よくある誤解を、まとめて片付けておきます

  • 「1点1万円未満なら免除」——誤りです。判定するのは一度に持ち込まれた物品の合計額です
  • 「税込1万円未満なら免除」——誤りです。消費税を除いた額で判定します
  • 「500円の中古本だから記帳不要」——誤りです。書籍は例外品目なので、金額に関係なく確認と記帳が必要です
  • 「分けて持ち込んでもらえば免除される」——形式的には各回で判定されますが、正当な理由なく分割を希望する相手方については、逆に警察官への申告義務が生じる場合があります
  • 「自分が売った物を買い戻すときも記帳が必要」——誤りです。自己が売却した物品をその売却の相手方から買い受ける場合は、金額を問わず確認も記帳も免除されます(第15条第2項第2号)。前回の記事で、受入れの「区別」欄に「返品」という選択肢が存在しないことに触れましたが、買い戻しがそもそも義務の外に置かれていることを知ると、様式のほうにも納得がいきます
  • 「免除されているから記録を残す意味がない」——法律上の義務がないだけで、記録を残す実務上の意味は別にあります。特に払出しは、確定申告の側から必要になります

おわりに

「1万円未満は免除」というルールは、単体で覚えると、かえって事故のもとになります。金額の数え方に3つの落とし穴があり、金額を無視して義務が残る品目が7つあり、そのうえ受入れと払出しでは義務の範囲そのものが違う。この3つの軸を分けて考えて初めて、実務で使える知識になります。

そして免除の範囲を正確に知ると、面白いことに「法律のためではなく、自分のために書いておく部分」の輪郭がはっきりしてきます。書かなくてよいと分かったうえで書くのと、分からないまま何となく書くのとでは、同じ1行でも意味が違うのではないでしょうか。

次回は、この記事で何度も出てきた「相手方の確認」について、非対面——メルカリやヤフオクで仕入れる場合に何をすれば法定の確認をしたことになるのかを書く予定です。

なお、この記事で整理した判定——税抜でいくらか、例外品目に当たるか、受入れか払出しか——を取引のたびに自分でたどるのは、正直なところ面倒です。私はそれが面倒だったので、仕入と売却を記録していくだけで様式15号の台帳がそのまま出力できるように、コブチョウを作りました。いま使っているエクセルと見比べてみてください。

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※この記事について
法令の解釈・運用は所轄の警察署によって細部が異なる場合があります。最終的な判断は必ず管轄の警察署(生活安全課)にご確認ください。また、税務の取扱いについては一般的な考え方を紹介したものであり、個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談・税務相談ではありません。

参考(一次情報)

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